『玉兎 露わる』(ぎょくと あらわる)
今年は卯歳の兎さんの年になります。
昔々、森の中でサルとキツネとウサギが修行をしていました。あるとき旅に疲れた老人が森を訪れ「私に食べ物を分けてくれ。」と倒れ込んでしまいました。サルは木の実やキノコを集め、キツネは川で魚を捕ってきましたが、ウサギは何も集められませんでした。そこでサルとキツネに火を起こしてもらい、自ら火中に身を投じて旅人に捧げたのです。旅の老人は帝釈天の姿に戻るとこのウサギの見事な捨身の慈悲行に心を打たれ、月に投影して永く称えたのでした。実はこのウサギさんはお釈迦さまの前世のお姿なのだそうです。
さてこの色紙のことばですが、お月さまも兎さんもお悟りのすがたです。私たちは仏心とか仏性と呼ばれる仏さまのような清らかでけがれのない心をもって生まれてきたのです。ただそれが暗雲のような我欲や迷いによって覆われていて、気がつかないだけなのだそうです。もったいないですよね。「露」は新たに出現するのではなく、元々具わっていたものが現れるという意味になります。ですからその仏の種、悟りの種が具わっていることに気づくことが大切です。修行をして気づく人、大きな歓びや深い悲しみの中から気づく人など様々あるでしょう。そうなれば太郎も花子もポチもミケも、花や虫も、山も川も…何もかもが美しく尊い存在であることに気づくことでしょう。
世が混沌としていても悲しみや苦しみがあふれていても、尊くないものはないはずです。
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