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令和5年 如月きさらぎ2月)のことば

 

「福はー内、鬼はー外‼」どこからともなく聞こえてくるのは豆まきをする声。「寒いよー、淋しいよー」雪降る節分の夜のこと、外から誰かの泣き声が聞こえてきました。ひとりで留守番をしていた男は、戸を開けてびっくり。そこにいたのは3匹の鬼だったからです。鬼達を不憫に思った男は、何の躊躇もなく鬼たちを家に招き入れるのでした。

自分達が嫌われ者であることを知っている鬼たちは、男が家に招き入れようとしても遠慮してしまいます。そんな鬼たちを説得して、ようやく家に招き入れたのですが、それでもやっぱり鬼たちは遠慮した様子。男は安酒なので気にするなと言って、体を温めるために酒をすすめるのでした。気づけば一杯が二杯に、二杯が三杯に。男と鬼の酒盛りが始まり、歌ったり踊ったり…。男と鬼たちが酒盛りを楽しんでいたところへ「ただいま」と帰ってきたのは奥さんと子どもたち。家に鬼がいたのでびっくり仰天!奥さんや子どもたちに構わず、男と鬼たちは歌って踊って、陽気な宴会はまだまだ続きます。

鬼が家にいては福の神が来てくれない。貧乏暮らしはもうたくさん。奥さんと子どもたちが嘆いていたところ、家の近くを通りかかるのは福の神。福の神は賑やかな場所が大好き。鬼がいるとは知らず、男の家を福の神が訪ねるのですが… 人も鬼も神さまも、み~んな仲良しのめでたい節分の夜のお話でした。

私たちの日常は苦楽が共存の表裏一体。鬼も福も一方が欠ければアンバランス。ただ、鬼も仲間に引っ張り込んでのこんなに賑やかで楽しい節分ならば、「福ハ内、鬼モ内」にも納得してしまいますね。

 

…「ふくはうち おにもうち」(内田麟太郎 作/山本孝 絵:岩崎書店)より…