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5月5日はこどもの日。子供は座敷の花であり、国の宝とも言われます。ところが、「おさなごが しだいしだいに 知恵つきて ほとけに遠く なるぞ悲しき」という歌があります。私たちはもともとは無邪気で純粋な仏さまのようなこころで生まれてきたはずなのですが、ひとたび我まま執着が芽生えはじめると、自己中心の片寄った捉え方になり、ものごとをありのままに見ることができなくなってしまいます。親鸞聖人などは「我々は煩悩に満ちていて、欲ばりで怒りっぽく、ねたみ心が強く、それは死ぬまで消えないかも知れない」とまでおっしゃいます。これはほんとうに困ったことで、とても残念なことです。自分も苦しいし、相手も傷つけてしまうことだからです。ならばどうしたらよいのでしょうか。
私たちが我ままになってしまうのは自分が一番かわいいからです。一番大切なのは自分自身だからです。傷つかないように自分を守ろうとしたり、自分の欲望を満たすためにいつわったりだましたり、人のものを奪ったり、時には人を殺してしまう場合すらあります。どれもこれも自分が一番かわいいからです。そして弱いからです。自分が一番かわいい、一番大切という気持ちはこんなにも恐ろしいこころにも通じているのです。そしてそのこころは実は誰もが持っている心なのです。だから…だからこそ、嘘をついてはいけないのです。奪ってはならないのです。傷つけては、殺してはならないのです。みんな自分が一番大切なのですから・・・。これが思いやりのこころです。自分がされてつらいことは相手も同じ。自分がされてうれしいことは相手にとってもうれしいこと。相手を思いやる心、相手の立場に立って考えること、未熟でどうしようもない私たちが平和に生きられるためにはとても大切なことです。そしてそれは人間にしかできない、人間にだけ与えられたことなのかも知れません。
こぼしてはならない、こぼればなし
平成24年5月5日。日本のすべての原子力発電所が運転を停止しました。
戦後、高度経済成長が進むにつれて何か大切なものがどんどん失われていくなぁと感じてきた人は少なくないでしょう。それも昭和から平成に入ったころからは特に強く、危機感すら感じていたのではないでしょうか。便利で快適な生活の恩恵に浴しながらもその代償の大きさにも不安を抱いてきました。過度の便利、過分の快適は決して安心平和に通ずるとは言えません。少しは不便を感じても昭和30年代あたりにまで立ち戻り、日本人らしい心豊かで人情味のある生活が私たちの理想であったことにも遅ればせながらも気づき始めていました。しかし私たちの少しばかりの我慢くらいでは便利な世から不便には到底戻れないことも知っていました。
昨年3月11日の東日本大震災は、嫌が汪にも人類、特に日本人の歩んできた道のりを検証せざるを得ない神々の警告かとさえ思える象徴的な大震災でありました。多くの犠牲を払い多くの希望を閉ざされたこの経験を、これからの社会の本質的な変革につないでいかなくては犠牲を犠牲のままで終わらせてしまうことになってしまう、そう感じている人もまた多くあることでしょう。
原発が止まれば困る人は多くいます。補助金や保証金を長い年月当てに生きてきた人たち、原発が生きる糧そのものの人たち、電気の安定供給なしにはなりわいが成り立たない人たち、声高に発し続けてきた理論を今さら覆せない人たち、長い間嘘を言い続けてきた人たち、莫大な灰色のお金をもらい続けてきた人たち・・・その中には懸命に生きてきた人、実直に生きてきた人、そうでない人、いろいろな人がいます。
昨年の東京電力福島第一原発事故の検証は何ひとつなされていません。チェルノブイリの原発事故もスリーマイル島の事故もまだまだ終わっていません。ヒロシマ・ナガサキももちろん終わってなんかいません。それに事故は地震や津波だけで起こるとは限りません。テロもミサイルもないとは言えないでしょう。何をもって安全と言えるのでしょうか。何をして責任をとるというのでしょうか。技術立国日本、さまざまな再生可能エネルギーを活かした開発実用は雇用促進、経済再生、地域自立、環境浄化、種の存続にはつながらないのでしょうか。何もまだ始まってはいません。
不思議でなりません。国民の声を聞き国民のために働くのが政治を行う人と聞いていました。なのにどうして聞いてくれないの?東電の犠牲者の声には耳をなぜ傾けないの?本当に不思議な国です。本当におかしな国です。5月5日はこどもの日です。こどもは座敷の花、国の宝です。今の技術で手に負えないものの尻拭いを未来の子供たちに押し付けてはいけません。子供たちが安心して希望をもって生きられる、そんな社会を残してあげるのが大人の役割のはずではないのでしょうか。私たちはもう覚悟はできています。過度の便利快適よりも心豊かな暮らしを送るためならば、辛抱など平気です。自然か?不自然か?きちんと生きていくことの安心と充足は何にも代えられませんから。
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