卯月(うづき)(4月)のことば―


(とし)ごとに ()くや吉野(よしの)の 山桜(やまざくら)

     ()()りてみよ (はな)のありかを』

 

正光寺には二本の大きな桜の木があります。一本は二十数年前に正光寺で仏前結婚式を挙げられた新郎新婦さんの記念植樹。もう一本はたしか成人記念の鉢植えの桜が大きくなったのでお寺の片隅に植えてほしいと持って来られたもので、どちらもすくすくと育って毎年々々ほんとうに優美な姿を見せてくれています。

 

昔、中国に()(じょう)禅師という方がおられました。達磨(だるま)大師から六代目の()(のう)禅師のもとに行き、入門の許しを請いました。すると「お前さんはいったい何者で、どこから来たんじゃ。」と質問されました。「私は崇山から来た懐譲と申す者であります。」とごく普通に答えたのでしょう。面接試験ならば「○○学校を卒業し、○○の資格を持っています。」と誰もが答えるように。ところが真の禅者は一般的な答えなどは求めません。懐譲さんがいくら説明しても、何を言っても入門を許してもらえません。それからずっとその答えを見つける苦悩が始まり、八年後にようやくその答えが見つかりました。「見て分かることや、履歴なんぞをいくら説明しても何の役にも立たん。本来の自己を、生まれる前のいのちそのものを顕現しなくてはダメだわい。」ようやく入門が許され、十五年の修行の後に大悟され、臨済宗の流れの礎となられたのでした。

 

上記の歌は一休禅師が詠まれたという道歌ですが、慧能禅師が求めたものがそこに秘められています。慧能と懐譲、そして一休さんはひとつながりなのですね。

正光寺のホームページがリニューアルしています。 http://shokoji.net

おめでとう『国民栄誉賞』

長嶋茂雄さんと松井秀喜さんがともに国民栄誉賞を受賞されました。この中でお二人の受賞のコメントが素晴らしかったので、この紙面にも留めておくこととしました。以下は中日新聞の記事です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


二人の優れたお人柄が表れたことばですが、私も含め巨人ファンでなくとも多くの人々に親しまれ、愛されてきたミスターとゴジラの師弟の間には、深い信頼と愛情に裏打ちされたかけがえのないものを感じます。野球が大好きで、人が大好きな長嶋さんが二度目の巨人軍の監督時代に、謙虚で礼儀正しい松井選手を稀代の名スラッガーに育て上げました。そんなお二人の同時受賞。受賞理由も、長嶋さんは「社会に夢と希望を与え、野球界の発展に貢献した」と、松井くんは「ゴジラの愛称で親しまれ、感動や喜びを与えた」と政府は説明しています。思えば社会の不安や人心の喪失、絆や愛に飢えた昨今ではスポーツ界にのみ希石を期待してしまっているところがあり、事実それに応えてくれているのもスポーツ界なのかも知れません。暴力事件なども取り沙汰されますが、長嶋監督と松井選手の間には愛情と信頼しかありません。監督は松井選手の中に「花のありか」を見い出していたのでしょうし、そして手塩にかけ丹精を込め、見事に雄々しく開花させたのでしょう。ゴジラくんの現役時代の背番号「55」にちなんで5月5日の授与式になるようです。引退セレモニーのその日に。

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